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高齢者が賃貸を断られる理由と対策

断られるのは年齢ではなく、家賃・室内での事故・退去時の3つの不安。先回りして答えを用意すれば審査は変わります。

公開日:2026-09-21 更新日:2026-10-01

なぜ高齢者は賃貸を断られるのか

まず現状の数字を押さえておきましょう。高齢者向け賃貸を手がけるR65不動産が行った2つの調査(高齢者向けは2025年、賃貸オーナー向けは2024年)では、次のような実態が報告されています。

3人に1人高齢者が年齢を理由に入居を断られた経験がある
約4割高齢者を「受け入れていない」と答えた賃貸オーナー
約7割サポート次第で高齢者の受け入れを検討すると回答したオーナー

国の調査でも傾向は同じです。国土交通省が令和3年度に日本賃貸住宅管理協会の会員(187団体)に聞いた調査では、高齢者の入居に拒否感がある大家は7割弱にのぼりました(「拒否感はあるものの以前より弱くなっている」44%、「以前と変わらず強い」16%、「以前より強くなっている」6%)。内閣府の『高齢社会白書』(令和6年版)にも同じ数字が載っています。

注目すべきはR65不動産の調査の3つ目の数字です。オーナーの約7割は「サポートがあれば受け入れを検討する」と答えています。つまり拒まれているのは年齢そのものではなく、年齢にひもづく不安なのです。貸主が抱えている不安は、大きく次の3つに整理できます。

貸主の不安は3つ。それぞれに答えを用意すれば通ります 貸主が不安なこと こちらが用意するもの 家賃を払い続けられるか 家賃債務保証会社+預貯金の提示 室内で事故が起きないか 見守りサービス+緊急連絡先2名 退去時の対応ができるか 残置物処理の取り決め+家財整理
オーナーの約7割が「サポート次第で受け入れを検討する」と答えています。断られるのは年齢そのものではなく、この3つの不安に答えが用意されていないためです。
貸主の不安中身答え方
家賃を払い続けられるか年金収入のみで、収入証明が出しにくい家賃債務保証会社への加入、預貯金の提示
室内で事故が起きないか転倒・急病・孤独死への懸念見守りサービスの導入、近居する家族の連絡先
退去時の対応ができるか残置物の処理、原状回復の手続き緊急連絡先の複数確保、残置物処理に関する契約の活用

※民間の賃貸借契約では貸主に契約の自由があり、年齢を理由とする入居拒否が直ちに違法とされるわけではありません。一方で国は住宅セーフティネット制度により、高齢者等の入居を拒まない賃貸住宅の登録を進めています。

2025年10月から、借りる側の選択肢が増えた

2025年10月1日に改正住宅セーフティネット法が施行されました。貸主の3つの不安のうち「室内で事故が起きないか」「退去時の対応ができるか」に、国の制度として答える仕組みが加わっています。

仕組み中身貸主のどの不安に効くか
居住サポート住宅居住支援法人などが大家と連携し、安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎを行う賃貸住宅。都道府県・市区町村が認定します(法律上の名称は「居住安定援助賃貸住宅」)室内で事故が起きないか
認定家賃債務保証業者国が認定する保証会社。居住サポート住宅に入る要配慮者の保証を、正当な理由なく断らないことが条件です家賃を払い続けられるか
終身建物賃貸借の手続き簡素化貸主の認可が「住宅ごと」から「事業者ごと」に変わり、この契約を使える物件が増えやすくなりました退去時の対応ができるか

居住サポート住宅は、国土交通省の「居住サポート住宅情報提供システム」で探せます。これまでの登録住宅(高齢者などの入居を拒まない住宅)は「セーフティネット住宅情報提供システム」で探せ、東京都ではこれを「東京ささエール住宅」の愛称で案内しています。

退去時の不安に答える2つの契約

貸主が最も気にするのは、借主が亡くなったあとに契約を終わらせる手続きと、部屋に残った家財の処理です。ここには国が用意した2つの答えがあります。

どちらも「こういう契約で借りたい」と申し込み時に伝えられるだけで、貸主の受け止め方が変わります。受任者を頼める親族がいない場合は、次に挙げる居住支援法人が引き受けることもあります。

断られにくくする5つの準備

申し込む前に次の5つをそろえておくと、審査の通過率が変わります。貸主の3つの不安に、先回りして答える準備です。

順番のおすすめ。①区市町村の居住支援窓口に相談 → ②並行して高齢者専門サービスで相場を確認 → ③上の5点をそろえて申し込み。いきなり街の不動産店を回るより、断られる回数を減らせます。

東京で使える相談先と制度

都内では、都と区がそれぞれ高齢者のお部屋探しを支援しています。確認できたものを挙げます。区の制度は対象年齢や条件が細かく決まっているので、申し込み前に各窓口で確認してください。

相談先・制度内容
東京ささエール住宅高齢者などの入居を拒まない登録住宅(セーフティネット住宅)の東京都での愛称。国土交通省のセーフティネット住宅情報提供システムで検索できます
居住支援法人都が指定するNPO法人など。住まい探しの相談・入居支援、見守り、家賃債務保証、残置物の処理などを行います。東京都住宅政策本部が一覧を公開しています
世田谷区「お部屋探しサポート」60歳以上の単身世帯・高齢者のみの世帯などに、協力不動産店が空き室情報を提供します。窓口は世田谷区住まいサポートセンター
杉並区「高齢者等入居支援事業」65歳以上の方などが対象。家賃債務保証の保証料を上限3万円まで助成し、週1回の電話による見守りも受けられます

ほかの区でも、保証料の助成や不動産店の紹介を行っていることがあります。区の住宅課か、地域包括支援センターに「高齢者の住まい探しの支援はありますか」と聞くのが近道です。

よくある質問

高齢者の入居を断るのは違法ではないのですか?

民間の賃貸住宅では貸主に契約の自由があり、年齢を理由に断ること自体が直ちに違法とはされていません。そのため国は、断らない住宅を登録・認定する仕組み(セーフティネット住宅・居住サポート住宅)を広げています。

保証人がいなくても借りられますか?

家賃債務保証会社を使えば、保証人なしで契約できる物件は多くあります。2025年10月からは、居住サポート住宅に入る方の保証を正当な理由なく断らない「認定家賃債務保証業者」の制度も始まっています。

一人暮らしの高齢者が亡くなったら、部屋はどうなりますか?

何も決めていないと、相続人が契約の解除と家財の処理をすることになり、貸主が最も心配する点です。「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を使って受任者を決めておく、終身建物賃貸借で借りる、といった方法があります。

参考・出典
  • 国土交通省「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律」(令和6年法律第43号)の概要・施行について
  • 国土交通省住宅局「住宅セーフティネット制度の見直しについて」(令和6年3月)/内閣府『令和6年版高齢社会白書』第1章第2節
  • 国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(令和3年6月)/全日本不動産協会 お知らせ
  • 国土交通省・神奈川県 終身建物賃貸借制度の認可について
  • 東京都住宅政策本部「居住サポート住宅」「東京ささエール住宅」「居住支援法人」「終身建物賃貸借制度」
  • 世田谷区「お部屋探しサポート」「居住サポート住宅」/世田谷区住まいサポートセンター
  • 杉並区「高齢者等入居支援事業」/杉並区居住支援協議会
  • 株式会社R65「高齢者向け賃貸に関する実態調査(賃貸オーナー向け)」(2024年)、「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査」(2025年)※同社の発表資料

最終確認日:2026-09-30/制度の内容は発行元の異なる複数の資料で一致を確認したものだけを掲載しています。区の制度は年度ごとに変わることがあります。